空の境界

空の境界、映画の感想。



小説の映画化。
二つの媒体。紙の映像化
反背しあうといって大げさでない二つの媒体を、良く此処まで混ぜ合わせたと喝采を送りたい。

それほどまでに素晴らしかったのだ、この映画は。



皆さんは覚えているだろうか？
本当に何気ないシーンなのだが、式が一人、夜道を歩いてるときに、パトカーが横を通り過ぎるといった、本当に何気ないシーン、僕はその場面に深く感動してしまったのを今でも覚えている。
解析すると、それはアニメとして描かれている式の横を、CGとして描かれたパトカーが横切ったというシーンだった。
アニメーションとCG決して混ざり合うことのない二つが一つの場面に登場したとき、そのシーンは言いようも無い違和感を訴えるものとなった。


あの場面、そのシーンが観客に訴えたかったことは、式が一般人とズレた感覚を持っているとことの訴えなのだと僕はそう感じてならなかった。
事実、小説を読んでいる時の様な印象を、この映像は僕自身に何度も投げかけた。

巫浄ビル周辺をさまよう式、飛び降りる人影、黒桐幹也かと思い叫ぶ式、血塗れの別人の死体、そして安堵。
明らかに変だ、一般人と同じ感性をしていない。頭上から落下してくる人間に対して、どんな状況だろうと安堵を覚えるはずが無いのだ、だが映像の式は安堵していた。


戦闘シーン。
突如、伽藍だった式の瞳が蒼く輝き、ナイフ一本で空を飛ぶモノを討ち落とす異常性。
小説内で、幾度と語られた、式の魔眼の異常性。だが、映画内で『魔眼』といった言葉は一切でてきていない。
だが、式の眼が輝く。たったそれだけの描写で彼女は浮遊者を打ち落とす存在に変わった。
その様は異常であり、小説が幾度と無く言葉を繰り返した、異常性のこれ以上ないといった説明だった。


そう、この映像作品の製作者たちはどうしようも無いくらい、小説のような映像を求めたのだと思う。まるで小説を読んでいるかのような印象を、映像という全く別の媒体で、同じ印象を与えようと苦心したのだと思う。


恥ずかしながら、僕がこの映画をみた理由は、僕が奈須きのこファンであり、カルト的に言えば信者だから劇場まで足を運んだのだ。ただそれだけの理由だった。
おそらく表題はどうでもよかった、今回が偶々『空』であっただけで、映画館の幕内が『月』でも『運命』でも、極論僕は喜んで足を運んだのだろう。


だが、情熱とでもいうのだろうか、カルト的に言えば信者。
信者となった理由。
僕が『空の境界』をどうしようもないくらい愛していたのだと、今日僕は改めて気づかされた。